ウチはおばあちゃんと同居しています。
80歳を過ぎてからすっかり足腰が弱ってしまって杖をついて歩くのも大変な様子です。
歩く速度が遅いおばあちゃんは、家族に気を遣って一緒に外出する機会も減りました。
これでは益々足腰が衰えてしまいます。
少しでもお散歩をして筋力の低下を抑えないと本当に歩けなくなってしまうかもしれません。
高齢者にとってのお散歩は大切なトレーニング
お年寄りのお散歩は若者のように長い距離をいっぺんに歩くことが出来ません。
100メートル歩くと休憩して深呼吸で息継ぎをします。
それは若い人が100メートルを全力で走り切った後の息切れのような、そんなイメージです。
だから近所のスーパーに到着するまでに凄く時間が掛かったりします。
100メートル歩く毎に休憩が必要なおばあちゃんですが、休憩をするときに問題があります。
それは適当な場所にベンチが無いこと。ベンチが無いことには座れません。
一般的な歩道にはベンチなどそんなにたくさん設置してありませんから、スーパーに到着するまでは立ったまま休憩して深呼吸しています。
高齢者にとって歩くことはとても大切な運動です。
ちょっと気を抜くと一日中座りっぱなしということもあるお年寄りは、どんどん足腰の筋力が弱って遂には歩けなくなることも。
不思議なことに外出が減ると物覚えも悪くなって朝ごはんのメニューも忘れがちになります。
体力を維持するためだけでなく記憶力を維持するためにも、高齢者のお散歩は欠かしてはいけない重要なミッションであり、それはもうトレーニングなのです。
毎日のお散歩を少しでも楽しく気軽に外出して貰えるように、100メートル毎に取る休憩の時はゆっくり座って貰おう!というアイデアが家族会議の場で出されました。
とはいっても、椅子を抱えてお散歩をするのは少々骨が折れます。
どうすればいいかと思案していると、椅子付きシルバーカーを使えばいいというプランが飛び出しました。
シルバーカーとは
シルバーカーとはお年寄りの歩行を補助する乳母車のような手押し車のようなアイテムです。
若い人はキャリーバッグを引きながら歩きますが、お年寄りは手押し車を押して歩くのがトレンドです。
このシルバーカー、お年寄りが歩く際のサポート機能のほかに、椅子としての利用も想定されていてシルバーカーの上に座ることが出来ます。
これがあればベンチが見つからなくても何時でも座って休憩できるという優れものなのです。
更にショッピングカートのようにバッグとしての機能も搭載されているので、買い物先でペットボトルのように重い商品を買ってもバッグに入れて楽に運べます。
椅子がついてバッグがついて歩行を補助してくれるという、杖をはるかに凌駕する多機能製品なのです。
これでおばあちゃんのお散歩も捗ることだろうと、家族一同安心していました。
しかし、予想に反しておばあちゃんは喜んでくれませんでした。。。。。
シルバーカーを嫌がる高齢者
敬老の日も近いことですし、2017年の敬老の日プレゼントはシルバーカーに決定だな!と勝手に盛り上がる家族を冷ややかな目で見るおばあちゃん。
あまり嬉しそうではありません。
おかしいなぁと思いながらも、どんなデザインのシルバーカーがお好みかお伺いを立ててみると、
「シルバーカーは要りません!」
とまさかの拒否宣言が飛び出すではありませんか!
これには家族一同ビックリです。
家族からのプレゼントは何時でもニコニコしながら受け取ってくれるおばあちゃんが、シルバーカーにはハッキリと拒絶反応を示したのです。
恐る恐るその理由を尋ねてみると、なるほどと納得の理由がありました。
シルバーカーはバスに乗れない
シルバーカーは杖に比べて圧倒的に大きくて嵩張ります。
一応コンパクトな収納サイズに折りたためる構造になっていますが、お年寄りにはその操作がちょっと面倒くさい。
杖に比べて大きなシルバーカーではバスへの乗り降りがとても不便、というか出来ないというのです。
おばあちゃんはバスや電車の公共交通機関を使ってお出かけすることがあります。
足腰が弱ったとはいえ、まだまだ電車やバスを乗り継いで遠出するのです。
その時にシルバーカーだととても不便だというのがシルバーカーを嫌がる理由でした。
言われてみれば確かにその通り、納得の理由です。
でもバスや電車を利用するようなお出かけのときだけ、お気に入りの杖を使えばいいじゃないとも思うわけです。
状況に合わせてアイテムを使い分ける作戦です。
しかし頑なにシルバーカーを嫌がるおばあちゃん。
嫌がる理由は他にもあったのです。
シルバーカーはかっこ悪い!
おばあちゃんがシルバーカーを嫌がる本当の理由。
それは
格好悪から!!!!
なるほど。。。。
お年寄りとはいえ、自分がシルバーカーのお世話になるなんて認めたくなかったんですね。
いい歳して何を見栄張ってんのよ!
と言いたくもなりますが、お気持ちはよくわかります。
というか、ここでヘソを曲げられると後々面倒なことになってしまうので、何とか穏便に事を進めなければなりません。
おばあちゃんにシルバーカーを使って貰うために再び家族会議が招集されました。
そこではシルバーカーの使用を渋るおばあちゃんを説得する作戦が練られたのです。
自分が歩いている姿をビデオで見てもらった
様々なアイデアが出た家族会議ですが、そのほとんどはふざけたプランばかりで全く使い物になりません。
その中でも少しまともだと思えるプランが
おばあちゃんが歩いている姿を本人に見て貰おう
という案です。
おばあちゃんがヨチヨチとペンギンのように歩く姿をビデオ撮影して本人に見て貰うという作戦。
おばあちゃんがお散歩に出かけるのを見計らって、ビデオ撮影班がこっそり撮影します。
ビデオ撮影していることをおばあちゃんに意識させないために隠れて撮影するのです。
そしてそのビデオを本人に見てもらったところ、やっと自分の足腰の衰えを認めてくれました。
自分が映っている動画を見る機会は多くありませんが、自分の外見を客観的に確認出来る便利なツールですね。
まとめ:お年寄りほど衰えを認めたがらない
何とか自分の現状を理解してくれたおばあちゃん。
シルバーカーのプレゼントを受け取ってくれるかどうか、もう暫く様子を見る必要がありそうです。
若い人の目線では高齢者がシルバーカーを使うのは当たり前のことだと思い込んでいますね。
でも、お年寄りにもプライドがあるのです。
一方的に高齢者を年寄り扱いするのは、少々配慮が足りなかったみたいです。
敬老の日の贈り物に頭を悩ませる時期ですが、「高齢者」と決めつけずに広い視野で考えてみると、本当に喜ばれるプレゼントが見つかるかもしれないですね。