外出やお散歩が難しくなってきた高齢の方が、椅子に座ったまま、一日中テレビを見ているだけというご家庭は多いと思います
あまり動かなくなってしまったご高齢の方でも、本や新聞に興味を持つ方は少なくありません。
でも、足腰が弱くなってしまった高齢者は、書店や図書館でゆっくりと本を選ぶこともままならないのです。
そんなご高齢者におすすめできる「本」をご紹介します。
高齢者がよろこぶ本
高齢者がよろこぶ本は、若い世代が好む本とは、少し趣が異なります。
実際に高齢者が選んだ本を観察してみると、若い世代の感性では、とても選びそうもない内容の本を選んだりしています。
例えば、お坊さんが執筆された書籍や同年代の作家さんが書かれたエッセーなど、街の書店に行っても、なかなか平積みされていないような、マイナーなジャンルの書籍に関心を持ったりするのです。
逆に、野球やゴルフのレッスンなど、過度な運動を解説するような本には、あまり興味を示しません。
高齢者に本をプレゼントする際の参考になればと、本のジャンル別におすすめの書籍を選んでみました。
小説
年齢を重ねても、小説には興味を持ち続けるようです。
特に、近代文学の名作と言われる本には高い関心を持っていて、太宰治や芥川龍之介、夏目漱石などの作品集は、よく手に取っています。
【大活字本】しみじみ太宰治―じわりとこみ上げる6編
太宰治作品の中から、しみじみとした雰囲気の6作品をまとめました。頑なな心が故郷の人間に接してほぐれていくもの(「黄金風景」「新樹の言葉」)、結核で死んだ妹との病床でのやりとりを回想するもの(「葉桜と魔笛」)、へまばかりするので悪口を言っていた飲み屋の若い手伝いの女性の事情を死後に知って呆然とするもの(「眉山」)、しがない男爵と女優がむすばれるまでの紆余曲折(「花燭」)、故郷の津軽を巡る紀行の最後に幼少時に育てられた子守のタケとの再会を果たす話(「津軽」)。
【大活字本】じんとくる芥川龍之介―13の名小品
芥川の心を揺さぶる小品群を収録。息子を失った秘めた悲しみを描く「手巾」、実の親ではなかった母親への思いを述懐する「捨児」、故郷の隅田川への懐旧の念を吐露する「大川の水」、蒸気機関車に乗った少女が煤煙の中で窓を開ける事情、トロッコで遠くまできてしまった少年の不安を描く「蜜柑」「トロッコ」。武士の妻の気概を示す「おしの」。子猫のために貞操を犠牲にしようとする「お富の貞操」、雛人形を手放す商家の家族の葛藤を描く「雛」。働き者の嫁への愛憎を描いた「一塊の土」。他に、「父」「子供の病気」「片恋」と芥川の遺書を収録。
【大活字本】夏目漱石「こころ」(響林社の大活字本シリーズ)
漱石が乃木希典の殉死に影響を受け執筆した作品である。後期三部作とされる前作『彼岸過迄』『行人』と同様に、人間の深いところにあるエゴイズムと、人間としての倫理観との葛藤が表現されている。
山月記 (青空文庫POD(大活字版))
昭和初期に活躍したが惜しくも早世した小説家、中島敦の代表作とされる短編小説。1942(昭和17)年の「文學界」に、「文字渦」とともに「古譚」と総題して発表された。中国唐代の伝記「人虎伝」に基づき、詩に執心して、ついに虎に変身してしまった男のすさまじい宿命の姿を描いて、作者の自嘲と覚悟を語る作品。
宗教
宗教といっても、ほとんどが仏教に関する書籍で、お坊さんが書かれた講話集だったり、エッセーに近い書籍です。
仏教の解説書に興味を持つのは、お寺に伺う機会が増えるからなのかもしれません。
よか人生って、なんじゃろな
人は死ぬまで生きればよか。いま命があるということは、なにかしらの役目があるですたい。…北九州の片田舎にある小さなお寺の和尚さんがつむぐ、あたたかく、ときに厳しいメッセージ。
あなたがいるから生きられる 小さなお寺の法話集
「ちょっと話、聞かんね」悲しい話、不思議な話、心が温かくなる話など、お寺で起きた本当のお話をもとに、含蓄ある法話として語りかける名物和尚の法話集第二弾。
心が「ほっ」とするほとけさまの50の話: 「幸せへの近道」が見えてくる (王様文庫)
やさしい心には、やさしい出来事が集まってくる―― どんな問題にも、ほとけさまは「答え」を示しています!
エッセー・人生訓
高齢者と同年代の作家が書いたエッセーも好まれます。
外出の機会が減るとともに、同年代の友人と会うことも少なくなると、同じような境遇の高齢者が、どんな考えや意見を持っているのか?そんなことに興味を持つのでしょう。
また、人生訓のような、若い世代はあまり興味を持たないようなジャンルの書籍にも興味を示します。
九十歳。何がめでたい
大正12年生まれ。現在93歳の佐藤さんは2014年、長い作家生活の集大成として『晩鐘』を書き上げました。その時のインタビューでこう語っています。「書くべきことは書きつくして、もう空っぽになりました。作家としての私は、これで幕が下りたんです」その一度は下ろした幕を再び上げて始まった連載『九十歳。何がめでたい』は、「暴れ猪」佐藤節が全開。自分の身体に次々に起こる「故障」を嘆き、時代の「進歩」を怒り、悩める年若い人たちを叱りながらも、あたたかく鼓舞しています。
趣味
趣味は、人によって様々です。
でも、外出も難しくなるほどの高齢者になると、みなさん大体同じような趣味に落ち着くようです。
中でも「俳句」は、デイサービスのお仲間たちで盛り上がるらしく、また奥の深い文芸でもあり、お勉強の意欲も高くなる趣味です。
関連書籍の幅も広いので、高齢者への書籍プレゼントには選び甲斐のあるジャンルです。
暮らし・実用書
高齢者の実用書は、ほぼ脳トレに関するもので、ボケ防止を意識した頭の体操系の書籍です。
ドリルやパズルなど、楽しみながら脳の機能を維持できるような、そんな書籍に興味を持ちます。
認知症をくいとめる!脳トレーニングドリル
まちがい探し、点つなぎ、単語組みたて、漢字の成り立ち、般若心経の写し書き、4コマ並べかえ、出来事日記、時間を逆算するetc.脳は何歳からでも鍛えられる!
川島隆太教授の脳を鍛える大人の書写ドリル―俳句・短歌60日
1日に表面の俳句と裏面の短歌の書写を行います。親しみやすく、思わず声に出して読みたくなる名句60句、名歌60首を収録しています。文部科学省検定済教科書(書写)執筆者で文教大学講師の米本美雪先生による手本文字と書写指導により、脳を鍛えながら美しい文字が書けるように構成されています。
高齢者ならではのジャンルに気配りをする
本の好みは、人それぞれ個性があるものです。
高齢者の場合は、個人の好みに加えて、高齢者が特に好むジャンルがあって、それは若い年代には馴染みのない分野だったりします。
書店ではあまり見かけないような本も、普段から気にかける習慣が必要かもしれませんね。