女の子が生まれると、その初節句にはどうしても雛人形が欲しくなってしまいます。
でも、1年のうち数日しか飾らない雛人形は本当に必要なのでしょうか?
20年以上に渡り雛人形のお世話とお手入れをしてきたベテラン主婦が、雛人形選びのポイントと雛人形の管理やお手入れについての経験をまとめてみます。
そもそも雛祭りとは何なのか?
3月3日の雛祭りには、ちらし寿司を食べてお祝いをするという方も多いと思います。
特に理由も考えずにおめでたいような気持になっていましたが、そもそも雛祭りとは何なのでしょうか?
元々、雛祭りとは五節句の一つ「上巳(じょうし)(3月3日)の節句」に行われる厄除けの行事だったそうです。
「上巳のお祓い」と呼ばれるこの厄除けは宮中行事を起源にしていますが、江戸時代のころから女の子の無病息災を願うお祭りへと変わっていきました。
元来「厄除け」という意味合いを持つ雛祭りでは、人に似せた「形代(かたしろ)」で体を撫で、その形代を川に流して身代わりとして厄除けを祈願していたそうです。
雛人形の原点は、この「形代(かたしろ)」にあると考えられていて、人形制作技術の向上が著しかった江戸時代の頃に雛人形と共に雛祭りの習慣が広まったと考えられています。
つまり、雛祭りとは女の子の厄除けの行事で、女の子の身代わりになって厄災を引き受けてくれるのが雛人形なのです。
雛人形を選ぶ際の予算や管理に関する知識
このような雛祭りの背景や意味を知ると、やっぱりちゃんと雛人形を準備した方がいいのかしら?と感じられます。
古来からの厄除けの風習となると疎かには出来ない気分になってしまいますよね。
この辺の感性は人それぞれなので、別に気にしないという方には全く関係のない迷信です。
ただ、実際に女の子が生まれてみると、初節句にはやっぱり雛人形が欲しくなってしまうものなのです。
だって、赤ちゃんはどうしようもなくかわいいので、お雛さまと一緒にいる姿を写真に撮りたくなるんです。
とはいえ、衝動買いするには雛人形は少々値の張るインテリア。
雛人形を買った後のお手入れや管理、価格による雛人形の違いなど、雛人形選びのポイントについて押さえておきましょう。
雛人形を買わないという選択
我が家の場合は雛人形を購入しましたが、雛人形を買わないという選択も当然ありますし、今時は特に珍しいことでもないでしょう。
子供が小学校の低学年くらいまでは、子供の成長に雛人形が影響することもあると思います。
雛祭りのパーティーではお雛様がいると華やぎますし、お雛様の準備を通して伝統的な行事・風習について子供と話す機会を持てます。
しかし、小学校の高学年になると雛祭りのお手伝いもすっかり疎かになるので、雛人形の有無が子供に与える影響は本当に限定的ではないかなと思います。
逆に雛人形を買うのであれば、子供が小さいうちに買うべきです。
収納を考えて雛人形を選ぶ
住宅事情を考えると雛人形の収納は悩ましい問題です。
我が家もとても苦労して雛人形を押し入れに押し込んでいました。
雛人形を購入するときに絶対に注意しなければならない点は、お店で見たお雛様を自宅にお招きすると巨大化するという原則を忘れないことです。
こんなはずではなかったとならないように、出来るだけコンパクトな雛人形を選ぶこと。
雛人形を買うと、年に数日しか飾らないお人形のために貴重な収納スペースを割くことになります。
お人形の収納スペースの確保は本当に大変で、家の狭さを感じる度に押し入れの雛人形が恨めしく思えてしまうのです。
住宅スペースに余裕が無い場合は、くれぐれも段飾りの雛人形などに心を奪われませんように。
子供が成長したときにも飾れる雛人形を選ぶ
女の子が無事に成長して大人になった場合、雛人形はどうすればいいのでしょうか?
女の子が大人になっても、雛人形は毎年押し入れから出して飾ります。
年に一度は日に当て、風通しをしてあげないとお人形がかわいそうなので、たとえ子供が独立して家からいなくなっても雛人形は飾ります。
親元を離れるときに雛人形も持って行ってくれると助かるのですが、そうそう親の思い通りにはなりません。
女の子が大人になったときのことまで考慮して、飽きの来ないデザインの雛人形を選んでおくと違和感なく飾ることができます。
いくらくらいの雛人形を選べばいいのか?
雛人形は高いものから安いものまで価格の幅が広いものです。
高価な雛人形は確かに立派ですが、安価だからと言ってすぐに壊れたり、著しく見劣りするということは無いと思います。
我が家が選んだ雛人形はいわゆる普及品というお品で、10万円ほどの価格でした。
購入から25年ほど経ちますが、ほとんど劣化せず、お雛様の着物などは今でもとても綺麗です。
年に数日だけ箱から出して、後は押し入れで保管し続けるという雛人形ならではの鑑賞方法も劣化しない要因なのかもしれません。
高級な雛人形は確かに素敵ですが、日頃から人形に触れる機会の少ない素人の目では、雛人形の良し悪しは見抜けないものです。
だから、芸術性が高く工芸品のような高価な雛人形を無理に選ぶ必要もないでしょう。
2022年の雛人形を例に雛人形選びのポイントを解説
2022年現在、実際に販売中の雛人形を幾つかピックアップしてそれぞれの特徴や選ぶ際に考慮すべきポイントなど、雛人形購入経験者の視点から評価してみます。
奈良一刀彫の雛人形
一刀彫という技法で作られた雛人形です。
一刀彫には様々な流派があって、中でも奈良一刀彫はとても有名な様式です。
敢えて荒彫に彫り、面を組み合わせて対象物を表現する造りが特徴で、柔和な佇まいの多い雛人形には珍しいデザインに仕上がります。
奈良一刀彫の人形は伝統工芸品の類になるので、雛人形に限らずとても高価なものが多いです。
子や孫の代まで受け継ぐような雛人形をお探しの方には良い選択になるでしょう。
奈良一刀彫作家の荒木義人(あらき よしんど)さんの制作風景がYoutubeに掲載されており、そのインタビューの中で「的確に動物を捉えた面で構成される一刀彫は作品が生き生きする」と奈良一刀彫の魅力について述べられています。
荒木 義人 奈良一刀彫 雛人形 段飾雛 夢
豪華で色彩鮮やかな雛人形。
木の温もりと彩色の美しさを感じつつ、清楚で上品な雰囲気を醸し出している五段飾りです。
台となる桐箱に全て収納していただけます。
1,100,000円(税込)
荒木 義人 奈良一刀彫 雛人形 内裏雛(小)セット
奈良一刀彫の内裏雛。
コンパクトで場所をとらず、贈り物にも最適です。
インテリアとしてもお楽しみいただけます。
148,500円(税込)
木目込み雛人形
木目込み人形は桐塑(とうそ)で固めて作った本体に溝を彫り込み、そこに衣装となる布を木目込んで作られた雛人形です。
木目込み人形はその構造から、形が崩れにくいという特徴があります。
またコンパクトサイズのものが多く、収納の負担を軽減出来るメリットがあります。
手に乗るような小さな雛人形もあるようなので、収納や飾る場所に悩む方に向いている雛人形と言えるでしょう。
木目込み雛人形 またろび 親王飾り 恵
コンパクトさが特徴の一つであるまたろびシリーズの中でも、究極の小ささの木目込み雛人形。
手乗りサイズでありながら、平安時代の姫君を思わせる、格調高く気品あふれるお顔をしています。
小さいけれども本格派。飾るほど、見る程に愛着が湧く木目込み雛人形です。
121,000 円(税込)
木目込み雛人形 東山雛5人飾り
愛らしい幼顔の5人飾りをコンパクトに楽しめる収納式の段飾り雛人形。
五人飾りながら、お道具には重箱・御所車・御駕籠も付いて、コンパクトながらも豪華な雰囲気を演出してくれます。
段飾りの趣を気軽に楽しめ、収納式で保管や出し入れも簡単な木目込み雛人形です。
159,500 円(税込)
衣裳着雛人形
雛人形の中で最も多いタイプが衣装着雛人形になります。読み方は「いしょうぎにんぎょう」と読みます。
雛人形用に縫製した衣装を人形の胴体に着せる方式のお人形で、衣装の造りが凝っている作品が多くなります。
お雛様の衣装にこだわるという方にお勧めの雛人形と言えます。
小出松寿作 衣裳着 雛人形 親王飾りセット
最高位を表す黄櫨染の衣裳が格式高いお飾りです。
男雛 女雛 屏風 飾り台 雪洞 桜橘 菱三宝 飾りサイズ/屏風まで約幅70×奥行36×高さ31cm
286,000円(税込)
優香作 衣裳着 雛人形 親王ケース入り
優香作のお雛様をガラスケース入りにまとめました。ケースに固定されているので出し入れが簡単です。
男雛 女雛 雪洞 桜橘 貝桶 ガラスケース 飾りサイズ/約幅58×奥行33×高さ46cm
275,000円(税込)
インテリアとして雛人形を選ぶ
雛祭りのように女の子を主役にした伝統行事というのは、世界的にも珍しいのだそうです。
雛人形を購入すると確かに手間も増えるのですが、女の子の初節句にはお雛様を飾って家族でお祝いするのも楽しい思い出になりますよ。
最近は、自分のために雛人形を購入する大人の女性も増えているそうです。
きらびやかな衣装や優しい表情など、インテリアとしても楽しめる雛人形。
購入すれば長いお付き合いになります。
時間をかけて丁寧に鑑賞すれば、新しい発見があるかもしれません。