5月の上旬、ゴールデンウィークの時期は新緑がグングン伸びる時期です。
この時期の葉は鮮やかな緑色で美しく、またとても柔らかいのが特徴です。
1年のうちで4月後半から5月初旬までしか見られない貴重な新緑を楽しみにしている方も多いと思います。
この時期に生まれる若葉は植物にとって大変重要で、この若葉を上手に育てられるか否かが植物の1年を決定するといってもいいでしょう。
筆者の経験ではこの時期に害虫の食害にあってしまうと、その年はずっと植物の成長や活力に悪い影響が出てしまいました。
それは例えば秋の花付きが悪くなったり、実が小さくなったり、樹形の勢いがなくなったり悪いことばっかりです。
逆にこの新葉の時期に新しい葉を上手に育てられれば、この年は安泰とも言えます。
夏には豊かな葉をたっぷりとつけ、心地よい木陰を作ってくれます。
秋から冬にかけてはたくさんの実をもたらしてくれるでしょう。
何事も始めが肝心。
庭を蝶や蛾が飛んでいたら農薬散布の時期
4月の中盤から後半にかけて樹木の周辺を蝶や蛾が飛び始めます。
蝶がひらひらと飛ぶ姿は羽も美しく樹木の緑と相まって心が和む光景ですが、蝶の姿を見かけてから程なくして新葉が食害されていることに気づくでしょう。
これは蝶の幼虫が若葉をモリモリ食べていることが原因です。
飛んでいるのが蝶ではなくて「蛾」である場合、これは羽の色が茶色系なのですぐに判別できますが、その場合は要注意です。
恐らくその蛾は「ヨトウガ」という種類の蛾です。
あまり大きくない小さめの蛾なのでうっかりすると飛んでいる姿に気づかない場合もあります。
ヨトウガの幼虫はあっという間に樹木の新葉を食い尽くしてしまいます。
これは絶対に放置してはいけないケースで、全力で対策が必要です。
特に朝顔やヒマワリなどを地植えしている場合は、せっかく芽を出し双葉になるころに葉を全部食べられてしまいます。
鉢植えと地植えの樹木は害虫対策が異なる
害虫対策ですが、オルトランの粒剤は樹木の根元に撒くだけという扱いの楽な殺虫剤です。
しかし筆者の経験ではオルトラン粒剤は鉢植えした草には効果を感じられましたが、樹木や地植えした草にはどうも効きが弱いようでアブラムシやヨトウムシの被害を食い止めることは出来ませんでした。
またオルトラン粒剤を庭に撒くには大量に必要になってしまいコストパフォーマンスが悪い。
散布面積が狭いケースではスプレー剤やエアゾール剤の殺虫剤も効果が高いです。
スプレー剤やエアゾール剤は手軽に散布できるので害虫に気づいたらすぐに対応できる点が最大の利点で、害虫の初期対応には最適でしょう。
しかし梅やシマトネリコのような大きな樹木になると水で希釈して使う農薬が必要です。
農薬を正しく計量したり展着剤を加えたりと手間がかかるのでスピーディーな対応は難しいのですが最も根本的な対策になります。
この時期にしっかりと新葉を育てておけば樹木が丈夫に勢いづくので、結果としてこの後の手入れが楽になります。
庭木の種類と害虫対策
樹木の種類によって注意すべき害虫や対策のタイミングが少し異なります。
しかし新緑の食害は避けるべきという基本的なスタンスは変わりません。
新葉を食害されてしまうとどうなるのか?筆者の経験から庭木の種類ごとの害虫対策をまとめます。
梅の新葉
梅は4月後半から5月初旬にかけてアブラムシが発生します。
梅にとってアブラムシの被害は甚大で、アブラムシが付いた葉は縮れてしまいます。
一度縮んでしまった葉は元に戻ることはなく、夏に向けて樹形が著しく悪くなってしまいます。
また梅の実も小さく形も悪くなってしまいますので梅の害虫対策はこの時期を逃してはなりません。
この時期のアブラムシ被害を抑えられれば、その後の手間はそれほど必要なく過ごせるでしょう。
シマトネリコの新葉
シマトネリコは常緑樹なので落葉しないと思いがちですが、2月から3月にかけて驚くほど葉を落とします。
古くなった葉を落とすのですが、枯れてしまったのではないかと思うほどの勢いで落葉します。
ですが、4月から5月にかけて美しい若葉をたくさん出します。
新旧の葉が入れ替わるように新葉をつけるシマトネリコの葉はとても美しいもので、新葉の間から覗く5月の陽光には癒されます。
本来が葉を楽しむ樹なのでこの時期の新葉にダメージを受けてしまうと残念な1年になってしまいます。
4月から5月にかけてシマトネリコの生長で気を付けることは「ハマキムシ」の食害です。
柔らかい新葉を根こそぎ食べてしまうハマキムシは絶対に退治しなくてはなりません。
この時期の新葉を食害されてしまうと夏のシマトネリコの樹形が惨めな姿になってしまいます。
大きな樹形であることが多いシマトネリコは農薬の散布も骨の折れる作業になってしまいますが、基本的に春先の新芽の時期に1回だけ対策をすれば1年を乗り切れます。
柑橘類の新葉
ゆずのような柑橘類の葉も4月から5月にかけて若葉を出します。
柑橘類はヨトウムシに食害されることは少ないと思いますが、アゲハチョウの幼虫が付きます。
アゲハチョウの幼虫は大食漢で、恐らく葉を食害する虫の中でも一番の大食いでしょう。
葉をすべて食害されて茎だけになってしまうケースもあります。
柑橘類は殆ど落葉しないのですが、新葉は美しく勢いを感じられます。
新葉と古い葉が並んでいると明らかに新しい葉の方が美しく感じられ、新葉の多い樹は樹形全体も綺麗に見えます。
アゲハチョウの幼虫が本格的に活動を始めるのはゴールデンウィークを過ぎてしばらくした頃からですが、梅やシマトネリコと同じタイミングで農薬を散布しておけばそれなりに効果があります。
新しい葉を虫の食害から守ることは、その年の樹木の活力を決定づけるほど大切な意味を持ちます。
「春の新葉が一番大切」ということを過去のガーデニング経験から学びました。
この季節をうまく乗り切ることが、1年を通じて良好な樹木を育てる重要なコツと言えるでしょう。